コギトの本棚 将棋《ワイの銀が泣いている》


ご趣味は?と聞かれることも少ないですけれど、
もし聞かれたら、将棋観戦と答えます。
ほんと、将棋は面白いです。
はっきり言って将棋は弱いんですが、
その奥深さに魅了されてます。
プロ棋士たちとその対局には、いちいちドラマがあって、
それにノックアウトされる毎月。
そう、おっきい対局が最低月に数局あって、
そんな日は仕事が手につきません。
パソコンの画面にはりついてます。
今や、将棋はネットで観る時代。
ほんといい時代になりました。
将棋とネットの相性がいいのなんのって、
終局までライブ中継してくれるんですから、
昭和の将棋ファンが聞いたら、驚いちゃうでしょうね。
(将棋とネットの関係性など、今後改めて、書きたいと思います)

というわけで、この『コギトの本棚』の発案者の関さんと、
メニューなににする?という会議の時に、
僕はぜひ、将棋について書かせてくれと頼みました。
渋い顔されながらも、なんとか押し切った次第。
なので、月に最低でも一回は、
アツい将棋コラムをお届けしたいなぁと考えているところです。

さて、初回は、2013年三大ニュースと称しまして、
棋界における去年の出来事をあくまで
独断と偏見でおさらいしたいと思います。

第三位は……
『里見香奈さん、奨励会三段に!』
ご存じ『出雲のイナズマ』こと
里見香奈女流五段が見事ランクイン。
なんと、女性棋士初の奨励会三段となりました。
これは、すごいことです。
もしかしたら、女性初のプロ棋士が誕生するかもしれません。
『え?女性のプロ棋士、もういるじゃん?』
とお思いの方に補足をしましょう。
プロ棋士と女流棋士とは違うものです。
簡単に言えば、女流棋士というのは、
サッカーで言えば、なでしこリーグ。
つまり、女性初のプロ棋士とは、
なでしこリーグを飛び越えて、
Jリーグで、女性がプレーするようなものなのです。
そもそも、女性にとって、
プロ棋士の門戸が閉ざされているわけではありません。
『プロ棋士』の名の通り、そこに男性か女性かは関係ないのです。
ですが、なぜか今まで、女性のプロ棋士は存在しなかった。
それは、誤解を恐れずに言えば、女性棋士は男性棋士に比して、
将棋が強くなかったからなのですが、
その常識を里見香奈さんは、今破ろうとしています。
僕個人としては、
ぜひ、名人戦リーグで活躍する女性がぜひ観たい、
ぼこぼこと男性棋士を打ち破る女流棋士が観たい、
そして、やがては、女流棋士などという呼称を返上してほしいと
思って止まないファンなので、里見さんにはぜひ、
今年の四月から始まる奨励会三段リーグを勝ち抜き、
晴れてプロ棋士になってほしいと願っています。

さて、第二位にまいりましょう。
第二位は……。
『第二回電王戦、人間対コンピューター』
とうとう、そんな時代が来ましたね。
結果は、一勝三敗一引分で人間側の負け、
いや、完敗と言っていいでしょう。
これも、ネットと将棋の近親性を示した出来ごとですが、
それにしても激震が走りました。
ただ、人間対人間の対局では味わったことのない興奮と
感動が電王戦にあったことは、まぎれもない事実です。
それがただのロマンチシズムだったのか、それとも、
今後科学技術対人間という構図に一石投じるものだったのか……。
まだコンピューターとの戦いの歴史は始まったばかりなので、
これから徐々に明らかにされることでしょう。
電王戦は、双方対局相手を変え、
合計五局指されましたが、どの対局も熱戦でした。
なかでも個人的なベスト対局は、
PONANZA対佐藤慎一四段戦です。
結果は141手でPONANZA勝利。
終局直後いろいろと物議を醸した対局でした。
佐藤慎一さんは、心ない罵倒にさらされたりもしましたが、
時間が経ち、今、冷静に思い返せば、
後のコンピューター対人間の対局の
スタンダードとなるような対局だったように思います。
いよいよ来る三月には、第三回電王戦が開幕します。
故米長邦雄の「高をくくっていたら痛い目に遭う」
という言葉通り、第二回は、人間側がしてやられた訳ですが、
第三回は、プロ棋士の皆様は心して臨むらしく、
新たなる熱戦が繰り広げられることは必至です。

さあ、いよいよ第一位ですが、その前に番外編。
『みんなのアイドル矢内理絵子、とうとう結婚』
いやぁ、落胆した殿方も多いのではないでしょうか。
諦めきれませんが、
NHK杯の中継中に告白を決行した
山崎隆之八段ではありませんが、僕は矢内さんを諦めます。

それでは、第一位。
『第26期竜王戦、森内名人、竜王奪取。渡辺明竜王失冠』
タイトル戦の一年を締めくくる竜王戦。
去年は、ついに、山が動きましたね。
竜王と言えば、渡辺明竜王。
渡辺明竜王と言えば竜王というくらい、
当たり前に竜王に鎮座していた渡辺明二冠(現)が
ついにその座を引きずり降ろされてしまいました。
終わってみればあっけないものですが、
空気のように渡辺竜王という呼称が当たり前になっていただけに、
不思議な感覚すらしてきます。
ただ、それほど、去年の森内名人は強かった。
2月10日時点で、今年度の森内名人の成績は、
勝率七割越えという驚異的な強さを誇っています。
近年の森内名人の対局は、
観ていて、負ける予感がまったく湧きません。
森内名人は、俗に鉄板流と呼ばれる棋風なわけですが、
決して受け一辺倒ではなく、攻めも異様に強い、
まさに横綱クラス。
名人戦は、2月5日時点で早々に羽生三冠(現)が、
挑戦を決めてしまいました。
いまや伝統の一戦とも言える
羽生対森内カードが今年も観られます。
ただ、いかに羽生三冠であろうと、
ちょっと今の森内さんに勝つ姿が想像できません。
果たして、結果やいかに。
さて、個人的には、僕は渡辺明二冠(現)の大ファンです。
少々、今年度は成績不振と思われますが、
やはりそこは勝負師、現在行われている王将戦、棋王戦ともに、
白星先行で、どうやら盤石の模様。
おそらく防衛すると思われますが、
どうなるでしょうか。
ともあれ、渡辺二冠には、竜王がよく似合います。
今年は返り咲きを期し、
また、竜王戦に戻って来てもらいたいものです。

年末年始気分もどこへやら、
棋会はいよいよ、シーズンを迎えます。
対局中の王将戦、棋王戦を始め、
三月には電王戦、四月には名人戦と、
将棋ファンとしては、休むヒマはどこにもありません。
今年はどんなドラマが待っているのでしょうか。
というわけで、次回からは、俺的将棋の魅力と共に対局の
模様もお送りして行こうと思っておりますので、
どうぞよろしくお願いします。

こりゃ、仕事してるヒマねえな。
それでは。

(いながき きよたか)


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