オヤツ


『アイアムアヒーロー』

みなさんこんにちは。
わたしが映画を見て、気になったセリフを勝手に紹介する「おいしいセリフ」の第4回。
今回の映画は佐藤信介監督の『アイアムアヒーロー』です。※若干のネタバレがあります。


わたしは自分でも引いてしまうぐらい、なんに対しても感情移入してしまいます。映画を観に行くと本編が始まる前の予告でさえ泣きそうに、いや、泣いてしまうこともあります。暗い話や悲しい話はかなり疲弊してしまい、観終わった後も長時間その感情を引きずってしまうほど。悲しいかな、夢の中にまで出てきて苦しみます。作り物だと頭では理解していても観ている間は、実体こそありませんが、スクリーンの中で主人公と同じ場所に立ち、同じ景色を見てそこで生きています。
なので、ゾンビ映画は極力避けてきました。だって、わたしの感覚ではそこにいるんですもん。現実世界の自分が運動神経抜群で度胸と勇気があり、正確に銃をバンバン打てるような人間なら楽しめるかもしれませんが、足が遅く小心者で銃を見たことも触ったこともない。速攻死にます。ゾンビにすぐ喰われる自信しかありません。自ら進んで生死に関わるような体験は、できれば避けたいものです。

そんなわたしですが、最近ゾンビに挑戦する機会がありました。海外ドラマの『ウォーキング・デッド』です。現在シーズン6まで制作されている人気シリーズで、アメリカではCS放送史上最高の視聴者数をたたき出していると聞き、わたしでも楽しめるかもしれないと、観始めました。けれど、シーズン1の3話でストップ。やっぱり、グロイし怖い。楽しめない。ところが、たった3話で変に自信をつけてしまい、軽い気持ちで『アイアムアヒーロー』を観に行きました……。

冴えない男、鈴木英雄(大泉洋)は漫画アシスタントとして平凡な日常を送っていたが、突如、街の景色が一変し、目の前で人が人を食い始める。血液を介して感染すると人格が崩壊し人に襲い掛かる謎の病“ZQN(ゾキュン)”が蔓延する。英雄は命からがら都内から脱出。その際に女子高生の比呂美(有村架純)と出会い、標高の高い場所に行けば感染を防げるという情報を得た二人は富士山を目指す。

恐怖で息も絶え絶えになりながら、指の隙間からスクリーンをのぞいていました。時には小さなうめき声が漏れてくる始末。我ながら情けない姿です。それでも映画館から逃げだしたい気持ちをなんとか堪えながら観ていました。
ゾキュンを倒して一瞬安堵しても、すぐに次から次へと湧き出てくるやつら。ラスボス的存在のゾキュンを倒し、もうこれでやっと開放されると思った瞬間、倒したはずのラスボスゾキュンが起き上がります。心の底から絶望したわたしは、ここが映画館でまわりにお客さんがいることを完全に忘れ、そこそこのボリュームで「マジかよ」と口にしてしまいました。そして、そのゾキュンに気づいた英雄の顔がアップで映し出され、一言。

「マジかよ」

数秒前、わたしが発したのと同じ言葉を、同じトーン、同じ速度で。

……だよね。

地獄のような2時間から解放され、どっと襲いかかる疲労を感じながら、やっぱりゾンビ映画が苦手であることを痛感しました。このスリルを楽しむことは難しそうです。ですが、極度の恐怖体験により主人公と同じ台詞をほぼ同時に発するという、新しい映画体験をした作品として記憶に残る一本となりました。感情移入、ここまできたか。
とりあえず、『ウォーキング・デッド』シーズン1ぐらいは頑張って観てみようと思います。いつか、ゾンビを楽しめる人間になるために、わたしの挑戦はもうちょっと続きそうです。
ああ、今日の夜、絶対夢にゾンビが出てくるよお。






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