オヤツ

『ビューティー・インサイド』

みなさんこんにちは。
わたしが映画を見て、気になったセリフを勝手に紹介する「おいしいセリフ」の第2回目。
今回の映画はパク・ジョンヨル監督の『ビューティー・インサイド』です。

あらすじをざっと紹介いたしますと、18歳になった日から突然特殊なカラダになってしまった青年、ウジン。眠りから覚めるたびに、外見だけ昨日とは違う人間に変身してしまう。ときには小さな男の子。ときにはおばあちゃん。そして、ときには何を喋っているかもわからない外国人にまで。
そのため、他者と関わらないように生活していたウジンだったが、あるとき家具屋で働いている美しい女性ホン・イス(ハン・ヒョジュ)に恋をしてしまう。
ついにイケメンの姿で目覚めることができたウジンはイスに猛アタック。二人は急速に惹かれ合う。イケメン姿を維持するために毎日眠らずに過ごすウジンだったが、ついに眠気に負けてしまう…。
そんなところから始まる、かなり変わったラブストーリーです。

イスにとって、外見は毎日変わるものの、中身はいつもの愛しいウジン。特異なこの現象を理解できなくても、愛する彼を受け止めようとするイスがウジンに言うのが今回の台詞です。

「今日が続いてほしい。あなたも今のままで、わたしも今のままで。」

毎日変身してしまう恋人を持つイスが言うと、今のこの姿のウジンのままでずっといて欲しいという悲しい告白にも聞こえてしまいます。けど、そういうことではないですよね。
この状況に不安はある。だけど、一番大切なのは気持ちで、この今の気持ちがあれば、あなたといつまでも一緒に生きていけるわ、というイスからの愛の告白だと思いました。

このセリフは、特別な状況にいるイスだから感じることではないと思います。互いに思い合っている愛しい人と満ち足りた時間を初めて共有できた瞬間に、誰もが一度は抱く普遍的な感情じゃないでしょうか? どれだけ時間が過ぎようとも、今のこの気持ちのままお互いをずっと思い合うことができたらいいのに……。ええ、わかりますとも!
けれど、人って時間が経つとそんな風に思った瞬間のわたしとあなたがいたことすら忘れてしまいます。このセリフを聞いて、かつて自分の中にもこんな気持ちがあったことを思い出し、ハッとしました。

この映画を鑑賞し終えたあと、後ろにいた若い女性客二人組の会話に聞き耳を立てていると(わたしにとって映画館で映画を観る醍醐味の一つは、他の観客の感想に聞き耳を立てることです。へへへ)、
「映画だと変身するのがイケメンばっかピックアップされてたからいいけど、目が覚めて知らないおっさんが隣にいたらムリなんだけど~。絶対ムリ~。」
と楽しそうに話していました。
イケメン変身打率2割ぐらいでも意外とオイシイんじゃないか、とお気楽なアタマで想像してみたわたしは、外見が変わる相手でもそれなりに毎日楽しく過ごせそうな気がします。ただ、あくまで付き合っている恋人がそうなってしまった場合ですが……。皆さんはどうでしょう?

ただ「今日が続いてほしい」と思う反面、変化することへの楽しみというものもあります。二人で年を重ね、例えば家族になり新たに生まれてくる面があったり、そういった変わっていく自分たちも見てみたいという欲求。そして変化は内面だけではなくて、やっぱり外見も感じたい。やれ白髪が増えただの、やれシワが増えただの、そんな他愛もない会話がしたい。やっぱりわたしは、たとえイケメンじゃなくても、毎日同じ外見の男性の少しずつ年をとっていく様を見ていたいです……。
おっと、すいません。無駄な妄想に付き合わせてしまいましたね。今回は、この辺りで失礼いたします。






mail
コギトワークスロゴ