いながききよたか通信


週が明け、現在、三月三日、今日は女の子の日ですね。
「桃の節句」です。僕は三月生まれなので、
子供の頃、この「桃の節句」が嫌いでした。
三月全体がなんだか、女の子の月みたいで、
なよなよしたイメージだったからです。
三月生まれと言えば、なにかとハンディがあります。
ただでさえ、体格も小さいし、頭の方も少し遅れぎみ、
だから妙に男の子らしいことに憧れていたのです。
「ああ、五月生まれだったらなぁ」と思ったことしばしばでした。
でも、今は、『三月生まれ』がとても好きです。
だって、なんだかいつまでも若い感じがするからです。
それに、女の子の月生まれというのも、
お洒落な感じがしなくもありませんし。
ただ、今の僕は「桃の節句」を祝うことが出来ないほど、
仕事仕事仕事の連続です。
内容をつまびらかにするつもりはありませんが、
その一つには、大きな初挑戦も含まれています。
近々、それがどんなものだったか、
書いてみたいと思っております。
もう一つは、シナリオを書いています。
いつもは、余裕を持って書かせてもらっているのですが、
今回は、与えられた猶予が一週間後……。
明日が締め切りです。
しかし、一週間で劇映画のシナリオを一本書くとか、
やっぱり無理ですね。粗製乱造という言葉がありますが、
まさにそれになってしまいそうで、コワい思いをしております。
いつか、映画に限らず、映像作品のシナリオを
どう書いているのかということについて、
書いてみたいと思いますが、
ここで、少しその触りでも紹介してみたいと思います。
シナリオ執筆には、大まかに言って、三段階ほどあると思います。
1、テーマを決める。
2、構成を固める。
3、シナリオを書く。
です。それぞれの割合は、1段階が3割くらいでしょうか。
2段階が5割です。そして3段階が2割。
つまり、半分以上は、構成を固めるという
段階に注力するわけですね。
これは、ライターさんそれぞれに流儀がありますので、
一般化は出来ませんが、
少なくとも、僕の場合はこうなります。
と、ここで、注釈を付けなければならないことは、
「テーマ」についてです。
「テーマ」というのは、
普通、一般の人が使っている「テーマ」とは
少し意味が違います。
ここを理解することが、シナリオライターに
とっての第一歩のような気がしています。
普段使っている「テーマ」とは、
たとえば、「愛は尊い」とか、
「人間は時に失敗を犯すが、
根本的には素晴らしいものである」とか、
そういう抽象的なものでしょう。
しかし、シナリオにおける「テーマ」というのは、
あくまで具体です。
たとえば、こんな具合です。
「百姓に雇われた七人の侍が野武士を倒す」(『七人の侍』より)
これがシナリオにおける「テーマ」です。
まあ、言い換えれば、つまり、一行あらすじですね。
これが簡潔で、かつ人を惹きつけ、
無限の想像をかき立てることができれば、
もうシナリオとしては勝利だと思います。
しかし、この「テーマ」というやつは、
簡単なようでかなり難しいのです。
ここまでそぎ落としたあらすじだと、
少しひねったくらいでは、
既にある傑作と似たものにしかなりません。
だから、ここに力の3割をかけたいのです。
(人によっては、これがすべてだと言うかもしれません。
それも分ります)
そして、この「テーマ」を決め、
構成、シナリオと流れるわけですが、
現在手掛けているものは、
なにせ猶予が一週間ですから、
テーマも構成もすっとばして、
シナリオに着手しなければなりません。
シナリオを書きながら、テーマと構成の帳尻を合わせていきます。 果たして、こんなやり方で映画のシナリオというのは
書けるものなのか、今、僕は戦々恐々としている最中です。
が、いずれにしろ、来週には答えが出ているはずです。
正解か、不正解か、どちらになっていることやら……。


(いながき きよたか)




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